缶詰ヒーロー







  

  縦横百メートルほどの石版は、白亜の大理石。幾本もの直線的な溝が石版を碁盤の目に区分して、
 秀麗なまでに輝いている。

  石版は闘技場だ。

  舞台はいくつもの頑強な鉄筋を交差して作られた土台の上、地上一・二メートルに位置。フィールド
 の四隅には天空に悠然とそびえる四本の柱。

  しかし、今は美しい舞台も、大会中は何度も何度も、飽きるほど修復を施した。

  数多くの猛者が戦い、大地を穿ち、大気を燃やし、観客を狂わせたことは記憶に新しい。

  空から見ると石版の中央部に、傲慢で力強いロゴが描かれていた。

  ―――――『Hero's King』―――――

  ロゴの周囲には描かれた深紅の炎が渦を巻き、偉大なる勝者を称えている。

  フィールドの入場口、古代ローマのコロッセオを模した造りの観客席に立つ初老の男がいた。怪しげ
 にサングラスをかけ、繚乱と巻き上がる砂に顔を渋めていた。

  だが、未だ熱気の残る世紀のイベントの舞台となったフィールドを見やり、楽しげに顔を緩ませた。

「まさか、これほどのモノになるとはのう」

  声と背筋に震えが走る。老人は、年端のいかぬ子供のように湧き上がる感情に恍惚と表情を浮か
 べた。

「まったく、長年かけて造ったかいがあったわい」

  目を閉じる。

  映像は鮮明に蘇る。

  もっとも偉大な『ヒーロー』を決める闘い。

  各々の武・智・心。

  優勝カップを手に取り、喜び勇む彼の青年。

  大会の賞金を司会者からもぎ取り、彼の持つ"ヒーロー"と共に早々と去っていった。

「………まあ、それもよかろう…ちっと、『ヒーロー』っぽくなかったが……」

  踵を返し、老人は歩き出した。










  ここに紡がれる歴史の切れ端

  全ては記憶の一握り

  誰もが願い

  誰もが羨望し

  誰もが憧憬し

  誰もが心に刻み

  誰もが彼らを称え













  ―――――誰しもが、強く強く、何よりも美しく――――――












  ≪栄光≫を、我が手に















        SEE YOU NEXT 『Are you a Hero?』 




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